話題のコンセプト型レストランを分析!【渋谷・OUT】

話題のコンセプト型レストランを分析!【渋谷・OUT】

朝起きて、自分のFacebookのタイムラインをニュース代わりに観ていたら、某広告代理店で流行に強い関西出身の友人が昨晩シェアしていたポストに、少しだけ気になる投稿があったので、自分が過去に考えていたビジネスにも近いなぁ、、、と。思わず、僕もポチっといいね!とシェアしてました。

 

折角なので、そのあたりのビジネスの考察をしてみましょう!!趣味は新規ビジネス研究なので飲食店レビューって言う企画ではないですよ。流れてきたフィードはコチラ!

 

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元々の記事はコチラです(^^♪

メニューは1パスタ、1ワインのみ。最高に潔い、新感覚レストランへ行ってきました!(Yukiko Kaigo)

幾つか参照すると、

One dish. One wine. One artist.
コンセプトは「One dish. One wine. One artist.(ひとつの料理、ひとつのワイン、ひとつの⾳楽)」という、斬新なこちらのレストラン。その宣言通り、メニューは、季節ごとのベストトリュフを使った自家製フレッシュパスタのみ。セットドリンクはパスタにベストマッチなシーズナル赤ワイン1銘柄、店内の音楽はレッド・ツェッペリンのアナログサウンドのみという、究極のこだわりと気持ち良いぐらいの潔さが魅力的です。

 
 他にもTwitterで調べてみると、

 
 

凄い!行ってみたい、食べてみたいっていう気もするのですが、その前にこのビジネスの良いポイントを僕なりに整理してみました。今日のブログは強いて言うと、読んで頂いている(食いしん坊の方)の代わりに「そのビジネス、僕が代わりに考察しておきました!」

ちなみにですが、朝起きてブログをいきなり書くというのは新しい経験。まぁ、そういう朝もあって良いと思うので このまま書き進めて行きましょう!(って、書いてたら打ち合わせに会社行かなきゃで昼にまた書き進めました。)

 

このビジネスの凄く面白いところ。3点。

1) 食材の廃棄ロスが極端に少ない
2) 専門店なので、オペレーションを簡略化できる
3) コンセプトにエッジが立っているので高単価を設定できる

 

 以下、一つ一つ見て行きますね。

 

1) 食材の廃棄ロスが極端に少ない

もう、これだけで利益の確保の仕方が凄く変わります。当然だけど、飲食ビジネスをするには原材料の仕入れが必要です。そして、食品を扱っているが故の課題ですが、何でも鮮度の高いうちに使い切らないとお客様には出せません。少し鮮度が落ちたくらいであれば従業員の賄いご飯に使ったりするなど用途を変えて効率的な利用をしていきますが、それでもある程度の限界はあります。過去にバイトをしていたイタリア料理店や、聞いた話で恐縮ですが一説には飲食店の廃棄ロスは5~10数%と言われていて、その分仕入れのコストを高める(圧迫する)ので、廃棄ロスの少なさは飲食店の利益に直結するのです。

 

 
さて、このお店のパスタで使われている材料をこのページから見てみましょう。
 
私はセットをオーダー。パスタの量は、なんと150g! 通常のレストランの倍近く盛られています。一見かなりのボリュームに思えるかもしれませんが、クリームを使わず、イタリア産のオーガニック⼩⻨粉、北海道産のバター、オーストラリア産のオリーブオイル、塩、パルメジャンチーズのみで仕上げたシンプルな味付けは、くどさがなく、軽く完食できちゃいます。シーズンベストの産地から取り寄せた新鮮なトリュフは、いただく直前に目の前で削ってくれる贅沢さ。ふわっと立ち込めるその芳醇な香りがたまりません。
 

先ほど紹介したVOUGEのページに下線を引いて、ハイライトしておきました!使っている材料は、

① パスタ
② 小麦粉
③ バター
④ オリーブオイル
⑤ 塩
⑥ パルメジャンチーズ
⑦ トリュフ       以上!!

これね、①~⑦の全てがほぼ日持ちがする(1-2日で鮮度が大きく異なりお客さまに提供できなくなるものでない)食材に加え、全てがそのまま料理の最終形の一歩前として使える簡単さがあります。そして、それぞれの食材は端材としても活用可能なものばかりなので、廃棄ロスは極端に少ない事が想像できます。

これだけで、一般の飲食店に比べて上記の通り5~10%程度の利益を確保できるので、有利な競争をすることが出来ますね。あとは、この仕入れ価格を利用して A:お客さまに還元する形で安く提供する か、 B:その分を他の投資に回すことで魅力ある店舗を作りこむ かの2択で考えられるようになります。このお店の場合は、Bを選択していそうです。

 

2) 専門店なので、オペレーションを簡略化できる

次に、専門店化することで得られるこの部分も恩恵があるのでフィーチャー。パスタを作るのってあんまり難しくないんですよね。今は閉じてしまいましたが、過去に仕事の合間に「神楽坂パスタ研究所」なるブログを立ち上げていて、そこそこアクセスを稼いでいた時期もありました。検索しないでね。笑

本当はパスタ一品一品は、食材の火入れのタイミングも違うし、アルデンテのタイミング(茹で汁の中でアルデンテにするのか、パスタソースと合わせてアルデンテにするのか、そもそもアルデンテが正しいパスタなのか)も異なるので神経質に細やかな配慮が求められたりするものなのですが、このお店一品だけですからね。

恐らく、使うチーズの量やバターの量も、パスタ50g毎に専用のスプーンで○○杯みたいな、誰がやっても同じ味をキープできるような仕組みになっていると思います。パスタを茹でて、何分のタイミングで鍋から上げて、フライパンでバターとオリーブオイルを熱したところに、細かく砕いたパルメザンチーズと、スプーン何杯の塩を振り、和える。。。

正直、料理が好きなバイトなら1日で習得可能なレベルの厨房オペレーション!!そして、料理を提供するスタッフも、料理の説明やトリュフをすり下ろすのなんて、超絶簡単!!

だから、僕ならきっとこの厨房に入れるスタッフの人選は、オープンキッチンなら確実にルックスの良い人をセレクトします。だって、料理の難しさが変わらないからね。塩の振り方とかが格好良かったら、もっと最高♪ 決して、冗談で言っているつもりはなくて、僕がこの店の経営者なら、きっとそういう戦い方を選ぶだろうな。と。

それも、これも潤沢な資本があって出来る話なのかもしれませんが、1)の廃棄ロスが少ない部分を、こういう所に再投資できるのはとてもいい、個人的には好きなビジネスです。

3) コンセプトにエッジが立っているので高単価を設定できる

そして、このお店の一番の面白い部分はコレ。トリュフパスタ専門店。日本人になじみが薄い食材のトリュフ(僕も昨年、イタリアに行くまでちゃんとトリュフパスタなんて食べたことなかった)をふんだんに使ったパスタ。原価が幾らなのかも良く分からないし、売っている値段の適切さってのも良く分からない。どうなるんだ?

で、何が言いたいか?というと、ビジネス的に凄く大事な事なのでちゃんと書きますが、コンセプトにエッジが立っているビジネスは、自分で価格を決めることが出来るということ。

これ、凄く大事で価格の決め方のフレームワークって多くなくて、基本は3パターン。

 a. 原価に利益を乗せて決める方法
 b. 競合商品との価格比較で決める方法
 c. その商品の絶対的な価値基準で決める方法

になります。

 

a.は最低限の価格の下限を決めて、b.は売れる範囲の上限に影響を与えるものと思ってください。で、c.は最終的に経営者のさじ加減で決めることができるもの。理想はcで正しい価格を決めて、お客さんにひっきりなしに来てもらえる状態が最高のビジネスだよね。

 

色んなサービスが世の中にあふれている今だからこそ、a.をちゃんとやって利益を乗せたいんだけど、b.の価格比較で負けて淘汰されてしまう。大手が本気出した時に、価格比較で勝負するのは中小企業は絶対に採らない戦略。いつでも比較されるこの世の中だから、いかに独自性を出して、訴求してc.の土俵に持ってくるか?が極めて大事。

翻ってこちらのお店、食べログから調べてみると単価は驚愕の 4,000 ~ 4,999円!! って、マヂで!?(ここでかなりぶっ飛びました!!)

 

OUT_客単価分布

食べログから参照: https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13210544/dtlratings/#price-range

食べログの評価については割愛しますが、とりあえずスタートダッシュには苦戦している模様。(2017年8月17日現在)
※ただ、食べログの評価があてにならない事はあるのですが、流行にやや敏感な層はやっぱり食べログ見てるところからすると、苦戦する要因があるとするとそこかな。後は、場所。このエリアでこの価格で1皿だけっていうのは、、、

価格の話に戻すと、 このビジネスでこの価格は度を越えて強気な設定だと思う。

渋谷~表参道でパスタを一杯食べて、ワインを一杯飲んでってのをする場合、4,000~5,000円を払える層って言うのはなかなかに少ない気がしますし、積極的なリピーターにはなり得ない。原価がこれだけ掛かっていての価格設定なら、仕方がないと思うんだけど、絶対にそこまでの原価が掛かっている感じではないな。パスタ1皿、ワイン1杯で。いや、ひょっとしたらここには凄い顧客体験が隠れているのかもしれない!!

VOGUE でこのお店を見つけましたが、LEONに詳しいのが載っていました!

■「OUT」
住所/東京都渋谷区渋谷 2-7-14 Vort 青山 103
営業時間/18:00〜翌2:00
定休日/月曜日 席数/13席

URL/www.out.restaurant

●料金/トリュフ(5g)を使ったフレッシュパスタ(150g)と赤ワイン(グラス)のセット4000円、フレッシュパスタ(150g)の追加600円、トリュフ(3g)の追加1500円、赤ワイン(グラス/その時のパスタにベストマッチの赤ワイン)1300円、ハウスシャンパン(グラス/ポル・ロジェ・ブリュット・レゼルブ)1400円

 
 

ふむふむ。多くの人がこの4,000円のセットを頼んでいるから、食べログの見え方が4,000~4,999円だったのね。これは、値付けの失敗。食券機を入れているなら、3,900円にして4,000円のテーブルから一つ下の見え方ができるように工夫した方が良いかな、明日にでも開始できる改善策として。

結論:このお店、応援したいけど、ちょっと難しいと思う。

夜だけしかやっていない事から、昼にスタジオなどで貸し出すなどの副収入をつくれ無くもないけど、基本的には夜メインでしょう。行った人がたまたまFacebookに複数人いたので話を伺うと、コンセプトや内装についてのコメントよりも、やっぱり価格的に割高感がぬぐえない。と。

カッコいいもの、エッジの効いたモノ、コンセプトが明確なモノを立ち上げても、そこにお客さまからの見え方っていう視点が無いと、正直どうしようもないよね。

とりあえず、ここで自分が食べてないのに割高感を論じても意味が無いので、近々行って、ビジネスとしてどこにお金を掛けているか?を確認してきたいと思います。それがお客様のためなのか、オーナーの自己満足なのか。来週に渋谷に行く予定もあるのでちょうど良いです。何となくですが、きっとこうすると良いだろうな。こういう条件でオープンすればもっといいんじゃないか?っていうアイディアはあるのですが、アイディアだけでは価値が無いので、このタイミングではコメントせず。どこかでアップデートします。

今後の東京の飲食店を含めたサービス業全体で変わっていって欲しい流れ

個人的には飲食店を含むサービス業は全て「専門店化」してほしいと思っています。その方が、サービス提供側も儲かるし、客として行く僕らは選ぶ楽しみがあるし。特に居酒屋みたいな金太郎あめみたいなところは全部そうなって欲しいと思っています。●●の専門店として、ジャンルを細かくする必要は無いですが、ある程度の縛りにして、「そこに行かないと受けられないサービス」ってのをどんどん作って行って欲しいと思います。

僕らのサービスも「その人じゃないと提供できない」っていう風にエッジを立てることを優先して、現在特別なパッケージを作っています。こうご期待ください。

そんなこんなで、僕はとりあえずトリュフを食べても「これがトリュフの味だ!アロマだ!」ってのが分からないと思うので、Amazonでトリュフオイルを買って、トリュフの予習をしようと思っています。意外とこの値段なら手が届くね!

 

※このブログを書くのに要した時間:約2.5時間。ボリュームと中身を精査して、もっと早くしなきゃだな。